moon walk

8月になると

世界の果てに

ピエロがひとり 現れて


崖っぷちを

危うげに

歩くのだという


それに気づくと

ああ 今年も

夏が死にはじめた


そう感じるのだと

言って

月光の下

いとけない笑みを浮かべた


ああ なんて

悲しい人だ 君は


美しい人だ

君は

2021

夢から覚めて

がらんどうの

がらんどうの 首都の朝です


ゆるやかに

自殺していく人たちが

列をなして歩きます

光を浴びて



わたしは 丸の内の真ん中の

冷えた路上に座り込み

せめて 歌おうと思います


あおぞらの歌

なみだの歌を


列車に飛び込むあの子のために

失いつづける この国のために


どん底のこの場所で

せめて うつくしい 歌を


猫のように

何もない

ああ 何もない土曜日は


思考なんて捨てましょう


ぽっかりと

空の色を見て

洗濯物の はためくのを見て


お腹が空いたら

ひっそりとした路地を歩いて

馴染みのパン屋に行きましょう

冷えた紅茶を買いましょう


そうやって

誰かと話すこともなく

誰かを思うこともなく


ただ 健康になりましょう


いつの日か

世界と愛し合うために

誓い

優しかったあの人が

もういないのだ、とわかった日


ゆうべの空は

花嫁のベールのように軽やかで

宇宙まで歩いていけそうだった


ひとりぼっちの縁側で

じわじわと冷えていく素足

ずっと聞こえてた

やわらかな耳鳴り


私は思った

どん底まで、自分でいよう。


こなごなになるまで

馬鹿みたいに、自分でいよう。

春の涙



心の中の ガラスの皿に

さらりとした水が溜まる


バスに乗るたび

新しい場所へ向かうたび


なみなみ

揺れて

なぜだか少し 泣きそうになる

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