猫のように

何もない

ああ 何もない土曜日は


思考なんて捨てましょう


ぽっかりと

空の色を見て

洗濯物の はためくのを見て


お腹が空いたら

ひっそりとした路地を歩いて

馴染みのパン屋に行きましょう

冷えた紅茶も買いましょう


そうやって

誰かと話すこともなく

誰かを思うこともなく


ただ 健康になりましょう


いつの日か

世界と愛し合うために

誓い

優しかったあの人が

もういないのだ、とわかった日


ゆうべの空は

花嫁のベールのように軽やかで

宇宙まで歩いていけそうだった


ひとりぼっちの縁側で

じわじわと冷えていく素足

ずっと聞こえてた

やわらかな耳鳴り


私は思った

どん底まで、自分でいよう。


こなごなになるまで

馬鹿みたいに、自分でいよう。

春の涙



心の中の ガラスの皿に

さらりとした水が溜まる


バスに乗るたび

新しい場所へ向かうたび


なみなみ

揺れて

なぜだか少し 泣きそうになる

lunatic conversation

春のはじめの日

月はまだ

冷え冷えと 空にあって


僕は

炭酸水をグラスに注いだ


月は話した

僕には分からない言葉


僕は話した

月には分からない言葉


世界で一番

透き通ったこの会話

炭酸水に溶かし込み

ふかぶかと酔っていく


春のはじめの金曜の

ささやかな夜の魔法だ


詩人のたましい

その詩人のたましいは

馬鹿みたいに美しかった


あんまり美しすぎたから

何の役にも立たなくて

あんまり美しすぎたから

かえって皆に疎まれて


ひとりでせらせら笑ってた


そうして詩人のたましいは

月のきれいな森のなか

首をくくって死にました

笑ったまんま死にました


笑ったまんま死んだのに

なぜだか涙がぽとぽと落ちて


今でも深い森のなか

掬われるのを待っている


掬われるのを待っている

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Author:fuko

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